研究所紹介

所長挨拶

歴史都市における地域に根ざした文化遺産は、長い年月をかけて醸成されてきた人々の文化的活動の結晶であり貴重な社会的共通資本です。このかけがえのない文化的価値を損なうことなく、災害の脅威から守り、次世代へ継承することは、現代を生きる私たちの責務です。

歴史都市の有形無形の文化遺産には、自然環境や災害と真摯に向き合い共存するための先人の豊かな知恵や技術、経験が内包されています。歴史都市防災研究所では、こうした先人の知恵を抽出し、コミュニティ全体に根付かせ、未来に受け継がれる減災文化の実現を目指しています。そのために、人文社会と理工学の学問分野の枠を超えて歴史的・文化的・技術的価値の多面的な評価に基づいて、文化遺産防災、あるいは歴史都市防災に関わる研究課題に取り組んでいます。さらに、アーカイブ等の情報技術を駆使する立命館大学アート・リサーチセンターとも共同しつつ、国内外の人材と研究プロジェクトが集うプラットフォームを構築しています。

歴史都市防災研究所は設置から20年を迎え、地域社会や地方自治体をはじめとする産官学、NPO/ NGO、そして国際機関との連携を充実させるとともに、「文化遺産防災学」の発展、文化的価値を継承する地域知と伝統知の蓄積、実践的な防災技術の獲得、即戦力となる実務家と将来の研究発展を担う若手研究者の輩出に取り組んでまいります。そして、当該分野の国際的な中心拠点として、充実した教育研究環境を確立し、社会貢献に努めていく所存です。皆様方のご支援、ご協力を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。

歴史都市防災研究所 所長 吉富信太